概要
宇宙の秩序を阻む者
ヴリトラ(Vritra)はインド最古の聖典『リグ・ヴェーダ』に登場する巨大な竜である。その名は「遮る者」あるいは「囲う者」を意味する。宇宙の活力である「水」を自らの巨体で閉じ込め、世界に旱魃と混沌をもたらす悪意の象徴とされる。
インドラの宿敵
神々の王インドラの最大最強の敵対者である。ヴリトラの存在は宇宙の循環を停止させる停滞そのものであり、彼を打ち倒すことは世界の創造と維持に不可欠な儀式的一図式を構成している。
形態
巨躯なる蛇
多くの場合、足のない巨大な蛇・あるいは翼を持たない東洋的な竜の姿で描写される。その巨体は山々を覆い尽くし、天界から地上に流れるべき七つの河川をその身の下に隠匿するほどに巨大である。
闇を纏う外見
ヴリトラがどのような色であったかはよく分かっていないが、光を遮る黒雲や雷雲と同一視されることが多い。鱗の一枚一枚が物理的な障壁として機能し、いかなる通常の武器も通さない堅牢さを誇る。
特徴
水の独占
ヴリトラの最大の特徴は、世界のすべての水を自身の腹中・あるいは山中の洞窟に封じ込める能力にある。彼が生存している限り地上には雨が降らず、河川は干上がり生命の営みは停止する。
ヴァジュラによる討伐
ヴリトラは「通常の金属や木、湿ったものや乾いたもの」では傷つかないという加護を有していた。最終的にインドラが工匠神トヴァシュトリに造らせた最強の兵器「ヴァジュラ(金剛杵)」によってのみ、その首を撥ねられ・背骨を砕かれて絶命した。
解放される生命
ヴリトラが倒されると、その体内や下敷きになっていた場所からせき止められていた水が一気に溢れ出した。この水の解放は太陽の出現や夜明けと連動しており、停滞していた宇宙の時間が再び動き出すことを意味している。


