概要
ティアマト(Tiamat)はメソポタミア神話に登場する海の女神である。神話では自らの子孫である神々に敵対する存在として描かれており、神々に対抗するためにムシュフシュなど11体のモンスターを産み落としたことでよく知られている。
形態
途方もなく巨大な体を持つ。その姿については諸説あり、人間とほとんど同じだとか、ドラゴンの姿をしているとか、またはラクダやヤギに似ているとか言われている。
特徴
- 普段はとてもやさしいが、戦いになると猛毒をまき散らしたり、敵をすくみ上らせるような気迫を発したりするなど恐ろしい一面もある。
- 神話によると、世界はティアマトの死骸から作られたのだという。このように巨大な神の亡骸から世界が創生されるというケースは北欧神話にもみられる。
神話
まだ世界が混沌としていたころ、ティアマトは夫のアスプ―との間に様々な神々をもうけた。そしてその神々もまた子供をもうけていき、世界にはたくさんの神々が暮らすようになった。
しかし、ここで問題が発生した。若い神々はとても元気が良いのだが、やんちゃでやかましく、ティアマトやアスプ―を散々からかうようになったのだ。これに激怒したアスプ―は、ティアマトの制止を振り切って子孫である神々に戦いを挑んだ。ところが、彼は主神エアによってあっさり殺されてしまった。
やがてエアにマルドゥークという息子が生まれた。エアはマルドゥークにすべての神に勝る力を授け、乗り物としてつむじ風を与えた。しかしこれが失敗で、マルドゥークが昼も夜もなくつむじ風を乗り回したため、世界が一日中どよめいて神々は一睡もできなくなってしまった。
困り果てた神々に泣きつかれたティアマトは、ついにマルドゥークと戦うことを決心した。そしてマルドゥークが絶大な力をもつことを見て取ると、11体の魔物を産み落とし戦力に加えた。
いよいよ戦闘となり、ティアマト軍はたった一人のマルドゥークと向かい合った。しかし、マルドゥークが相手を睨みつけると、情けないことにティアマト軍の司令官が逃げ出してしまい、たちまちマルドゥークの優勢となった。そしてマルドゥークが残ったティアマトを挑発すると、ティアマトはすっかりこの挑発に逆上してしまった。これはマルドゥークの思うつぼであった。ティアマトは彼が仕掛けた罠にまんまとはまってしまい、命を落とすこととなった。
こうして古い神々はすべて死に、マルドゥークを主神とする新しい神々の世界が始まった。
ティアマトが生んだモンスター
- ムシュマッヘ(七つの頭を持つ大蛇)
- 毒蛇
- ムシュフシュ
- ラハム(海の怪物)
- ウガルルム(巨大なライオン)
- 狂犬
- パズズ
- クルール(半魚人)
- ウシュムガル(ドラゴン)
- ギルタブルル
- クサリク(翼のある牛)
参考文献
- 健部伸明と怪兵隊「幻想世界の住人たちⅡ」(2011) p.93-102